目次
湯河原温泉ってどんなところ?
東京から電車で1時間15分、横浜からは1時間。
“東京の奥座敷”ともいわれる湯河原(ゆがわら)は、神奈川県と静岡県の県境に位置しています。
「足柄(あしがり)の 土肥(とひ)の河内(かふち)に 出づる湯の 世にもたよらに 児(こ)ろが言はなくに」(『万葉集第14巻 東歌』)
湯河原の温泉は、日本最古の和歌集『万葉集』にも詠われた、1,300年の歴史ある温泉です。歌にある土肥の河内(かふち)は、湯河原温泉を指しています。
解釈は諸説ありますが、上記の歌を訳すと
「湯河原の温泉が、夜となく、こんこんと河原から湧いているが、その湯河原温泉が湧き出るような情熱で、彼女が俺の事を思ってくれているかどうか、はっきり言ってくれないので、毎日仕事が手につかない」
という恋愛に悩む若者の歌になります。
明治になると文人墨客にも愛され、湯河原が舞台になった芥川龍之介の『トロッコ』をはじめ、夏目漱石、与謝野晶子、島崎藤村など、多くの文人が湯河原に滞在しました。
このように湯河原は、人々の創作意欲を掻き立てる情緒豊かな温泉地なのです。
車なしでも観光できる!
湯河原温泉の最寄り駅は、JR「湯河原」駅。駅を起点に箱根登山バスが運行しており、観光名所のすぐ近くにバスの停留所があります。なので車なしでも、十分観光を楽しめるんです!
この記事では、車なしで湯河原を楽しむ日帰りモデルコースを紹介します。
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発行年月 | 2022年11月05日 |
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ページ数 | 128p |
【10:00】JR「湯河原」駅に到着!
「手湯」で湯河原温泉に触れる
駅のロータリーには、足湯ならぬ「ゆがわらの手湯」があります。源泉掛け流しですが、ぬるま湯なので熱いのが苦手な方でも大丈夫。
相模の武将「土肥実平」と記念撮影!
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では俳優・阿南健治さんが演じた※相模の豪族・土肥実平(どい さねひら) 。
1180年(治承4)、源頼朝の挙兵には息子を率いて参戦し、敗走した石橋山の戦いでも頼朝を見限ることなく命がけで逃がした、忠義に厚い人物で知られています。
※相模…現在の神奈川県(北東部をのぞく)地域
そんな土肥実平と妻の銅像が、JR湯河原駅のロータリーにあります。「湯河原温泉に来た!」という写真を撮るならこちら。
まずは「湯河原温泉駅前観光案内所」に立ち寄ろう!
まずはJR「湯河原」駅ロータリー内にある「湯河原温泉駅前観光案内所」へ。駅の改札を出て、正面右手にあります。こちらでは湯河原温泉のマップや、日帰り温泉や各施設の割引券などが置かれています。
8:30~17:15
定休日:
年末年始
【10:30】「五所神社」で参拝!巨大な御神木に圧倒される
まずはJR「湯河原」駅から徒歩で「五所(ごしょ)神社」を目指します。駅から神社まで徒歩15分ほど。バスの場合は「五所神社」バス停で下車しましょう。
駅から徒歩で向かうと、道中に湯河原温泉の由来が刻まれた石碑があります。
こちらの温泉は少し熱め。注ぎ口がもう少し広かったら入浴できそうです笑。
横断歩道を渡った先が五所神社です。
「五所神社」の入口
こちらが五所神社入口。
社伝によると、今から1,350年前の天智天皇の御代に創建されたそうです。先ほど紹介した土肥実平が、石橋山合戦の出立前夜に、社前で戦勝祈願の護摩をたいたといわれています。このとき土肥実平が奉納した佩刀一口は、今も社宝として保存されているそうです。
鳥居をくぐり、階段をあがってすぐ右手にある手水舎。手をかざすと、龍の口から水が出てきます。
御神木の楠
手水舎の近くにそびえ立つ、巨大な楠(クスノキ)。五所神社の御神木で、樹齢は約850年なのだそう。
樹高は36mほどで、空を覆うように枝を伸ばしています。
まだ幼木だった頃、源頼朝が楠に「苦難にも打ち勝ち、互いに生長を誓おう」を声をかけたと言われており、健康・長寿・ボケ防止の力を与えるパワースポットとなっています。
「拝殿」で二礼に拍手一礼
こちらが拝殿。
湯河原の総鎮守として、天照大神以下5柱の神様が祀られています。
ほかにも境内には、七福神の像が7体すべて配置されています。
「御朱印」をいただく
一の鳥居をくぐり階段を上がった左手にある「社務所」にて、御朱印をいただけます。
書置きのみの対応で、初穂料は五所神社と湯河原温泉七福神の2種類セットで600円。
10:00~15:00
【五所神社の基本情報】
住所:
神奈川県足柄下郡湯河原町宮下359-1
アクセス:
【公共交通の場合】
・JR「湯河原」駅より徒歩約15分
・JR「湯河原」駅より箱根登山バス「奥湯河原または不動滝行き」に乗車ー「五所神社」バス停下車、徒歩約1分
HP:
ちょっと寄り道「明神の楠」
五所神社の境内から、県道を挟んだ向かいにそびえる「明神(みょうじん)の楠」。かつて、五所神社の参道には数多くの楠の巨木が生い茂っていたそうですが、今はこの明神の楠のみを残しています。
高さは約15mほどで、樹齢は850年。幹の割れ目には、赤い小さな鳥居がありました。
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発売日 | 2021年01月12日頃 |
ページ数 | 144P |
発行形態 | 単行本 |
【11:00】「福泉寺」首大仏!?に驚く
続いては、首大仏で有名な「福泉寺(ふくせんじ)」へ。神社から徒歩で10分ほど、バスの場合は「五所神社」バス停から乗車し「泉入口」バス停下車、橋を渡り徒歩2分ほど。ちなみに福泉寺は熱海市になります。
珍しい茅葺屋根の「本堂」
階段を上がると、茅葺屋根の本堂が現れます。1875年(明治8)に金160両で再建されたそうで、茅葺屋根の本堂をもつお寺は熱海市内だと福泉寺のみ。
「首大仏(釈迦如来像)」の由来は、けっこう悲しい
こちらが福泉寺の「首大仏(釈迦如来像)」。今から300年以上前、尾張名古屋藩主徳川家2代徳川光友(とくがわ みつとも)の時代に建立されました。
もとは名古屋城内に安置されていましたが、戦後福泉寺に奉納されました。首大仏の由来がわりと悲劇なので、ぜひ読んでみてください。
<首大仏の由来>以下、福泉寺案内版より引用
若君(徳川光友)出産にあたり、【四天下郎、身分の低い者がお殿様のお子を不浄な股からお産み申すのは万世の恥であり、腹からお産み申す】と言い切り、横断切腹して若君を出産され、母胎のその娘は命を落としました。
光友公は若くして孝順厚く、自分自身の出生経緯を知り、母上の菩薩を弔う供養をされ、供養として釈迦如来像の建立を発願されました。
現在はこの像は胸から上のみですが、上半身がどこかに埋まっている……という説もあるとか。
境内には「石仏」が点在している
福泉寺の境内には石仏が点在しており、どこか幽玄な雰囲気があります。
【福泉寺の基本情報】
住所:
静岡県熱海市泉191
アクセス:
バス停「五所神社」より、箱根登山バス「奥湯河原または不動滝行き」に乗車-「泉入口」バス停下車、徒歩約2分
HP:
【12:00】「湯河原 十二庵」でランチ!
福泉寺より徒歩約6分の所にある、「湯河原 十二庵」でランチ休憩! 湯河原の街のお豆腐屋さんで、豆腐メインの定食をいただけます。十二庵のメニューは公式HPをチェックしてください!
筆者がいただいたのは、「できたてとうふ御膳~納豆食べ比べ~」です。
できたてとうふ御膳はメニュー名どおり、施設内で生産されたばかりの豆腐をそのまま使った一品。豆腐、みそ汁(お揚げが1枚丸々入ってます)、総菜2種、漬物、そして2種類の納豆が並びます。
豆腐はほんのり温かく、スプーンで掬うと「とぅるるん」してます。角のない柔らかい食感で、わずかに甘みもあります。
醬油か塩をかけていただきます。はじめの1口は、何もかけずに食べてみてください! 豆腐のイメージが一転します。
また店内に販売スペースがあり、豆腐や湯葉といった豆腐店ならではのお土産を購入もできます。
筆者個人のおすすめは「どうなつ」。
豆乳とおからを生地に使用しており、しかも揚げていないヘルシーな焼きドーナツです。この日はチョコレート、湘南ゴールド、プレーンの3種類ありました。しっとり、もっちりとした食感で、甘さも控えめで食べやすい! リピートしたくなる味でした。
【湯河原 十二庵の基本情報】
住所:
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上42-17
営業時間:
[物販スペース]
9:00~18:00(土日祝:8:00~)
[イートンスペース]
平日:ごはん 10:00~14:00/カフェ 14:00~16:30(L.O.:16:00)
土日祝:ごはん 8:00~14:00/カフェ 14:00~16:30(L.O.:16:00)
定休日:
水曜日
アクセス:
福泉寺より徒歩約6分
HP:
【14:00】バスに乗って「不動滝」へ
お腹を満たしたところで、不動滝へ。十二庵から徒歩3分の場所にある「小学校前」バス停より箱根登山バスに乗車、「不動滝」バス停で下車します。
階段をのぼってすぐ不動滝が見えてきます。
「不動滝」を観賞しよう!
1分もかからず不動滝に到着。滝のすぐ近くまで遊歩道になっているため、迫力ある景色を楽しめます。
遊歩道の途中に茶屋があり、滝を眺めながら甘味や食事をいただけます。
滝の左手には「身代わり不動尊」、右手には「出世大黒尊」があり、厄除けや出世を祈願される方も多いとか。
【不動滝の基本情報】
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上750
アクセス:
十二庵より徒歩3分-「小学校前」バス停より箱根登山バスに乗車-「不動滝」バス停下車、徒歩1分
HP:https://www.yugawara.or.jp/sightseeing/646/
【15:00】「万葉公園 湯河原惣湯 Books and Retreat」でノンビリ過ごす
続いては、湯河原の新名所「万葉公園 湯河原惣湯 Books and Retreat」へ。バス停「不動滝」より箱根登山バスに乗車、「落合橋」バス停で下車し徒歩すぐです。
万葉公園 湯河原惣湯 Books and Retreatは、2021年に全面リニューアルオープンしたばかりの新名所。カフェや観光案内所がある「玄関テラス」、日帰り温泉「惣湯(そうゆ)テラス」、「万葉公園」で構成されています。惣湯テラスは事前予約制ですが、その他は無料で自由に散策できます。
まずは「万葉公園」を散策
園内を周遊する遊歩道が整備されています。ルートは複数ありますが、冒険心くすぐるトンネルを通るルートを選択しました。
トンネルに入ると、滝のような轟音が聞こえてきます。
トンネルを抜けるとそこは滝だった。
渓流を沿うように散策路が続いています。小さな滝がいくつかあり、マイナスイオンをいっぱい浴びます。
散策路の途中に、写真上のような東屋が2か所ありました。
東屋には椅子が2つと、本!?
東屋に限らず、園内の休憩スポットには本が置かれています。ジャンル・テーマごとに統一されており、こちらにはデザイン・創作関連の本が並んでいました。
渓流のせせらぎをBGMに読者を楽しむ……ああ、なんて贅沢な時間。
しかもfreeWi-Fiあり! 仕事もはかどりそうですが、せっかくなら読書したい。
道はまだまだ続きます。
東屋以外にも、椅子やベンチが設置されています。腰を下ろせる場所が多いので、土日でも余裕に座れました。
大きな見所はありませんが、自然の癒しがすごい。
散策路にはいくつか分岐点があります。寄り道したり、途中でルートを変えてみるのもあり。行き着く先は同じです。
願いを叶えて福をもたらす「狸福神社」
散策路から少し外れて「狸福(りふく)神社」へ。
由来をざっくり解説すると、人間の矢で傷付いた雄狸が湯河原温泉で傷を癒し、ついでに恋人もゲット。2匹のカップル狸は、温泉の恩を忘れることなく、人に化けて湯河原温泉のすばらしさを説いたという。
やがて狸たちは、旅人の願いを叶え福をもたらす神の使いとなり、今も温泉を守り続けているそう。そのカップル狸をお祀りしているのが、こちらの狸福神社になります。
祠と並ぶように狸が……あれ、3匹!? カップル狸と……2匹の子どもかな。
「熊野神社」で参拝
続いては熊野神社へ。手前には「太子堂」という六角屋根の建物がありました。
こちらが熊野神社。創建年代は不詳ですが、温泉の神様として地元の信仰が厚い神社です。
事前予約制の日帰り温泉「惣湯テラス」
散策路の終点にある日帰り温泉施設「惣湯テラス」。源泉かけ流しの温泉や、季節の食材をつかった食事を楽しめます。
原則、事前予約制。当日空きがある場合に限って、予約なしでも利用できます。
営業時間:
[土日祝]
10:00~20:00 (最終入館時間18:30)
[平日]
10:00~18:00 (最終入館時間16:30)
※利用対象年齢は中学生以上
定休日:
水曜日、第2火曜日(祝日の場合はその翌日)
料金:
[食事なし]3,000円
[食事つき]5,900円
HP:
プライベート感ある休憩スポット
東屋やベンチの他に、一風変わった休憩スポットを発見。
中はこんな感じ。1人用の椅子が中央に配置されています。四方を壁に囲まれ、プライベート感のある空間。しかも無料です。
ベンチにも本がありました。
無料でゴザの貸し出しもしています。芝生広場もあるので、ゴザを敷いて一休みするのもいいですね。
散策後は「玄関テラス」でホッと一息
公園入口に建つ「玄関テラス」には、カフェ、観光案内、トイレ、コワーキングスペース、ライブラリーなどが入っています。
コーヒやカフェラテ、ジュースなどのドリンク類や、サンドイッチ、スコーンやケーキなど軽食やスイーツも販売。
散策路にあった東屋や、川床のテラス席でいただくのもいいですね。
玄関テラスの「足湯」で疲労を癒す
玄関テラス外には、無料の足湯があります。泉質はナトリウム・カルシウム 塩化物・硫酸塩泉で、無色透明の温泉です。
日によって多少変わると思いますが、取材日はぬるめのお湯でした。タオルの販売などはないため、持参必須です。
【17:00】「こごめの湯」で疲れをさっぱり!
「万葉公園 湯河原惣湯 Books and Retreat」のすぐ近くにある、町営の日帰り温泉施設「こごめの湯」。男湯、女湯ともに露天風呂があり、無料休憩室や食堂もあります。
タオルの販売もあるので手ぶらでもOK。温泉は毎日入れ替えしており、こんこんと湧き出る源泉が旅の疲れをしっかり癒してくれます。
泉質:ナトリウム・カルシウム 塩化物・硫酸塩泉
源泉温度:60~90度
効能:リュウマチ性疾患、運動障害、創傷、慢性湿疹、更年期障害、痛風、高血圧症ほか
【こごめの湯の基本情報】
住所:
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上562-6
営業時間:
9:00~20:00(最終入場19:30)
定休日:
月曜日(祝日の場合は翌日)、不定休あり
料金:
大人 1,100円
小・中学生 600円
乳幼児 無料
アクセス:
万葉公園 湯河原惣湯 Books and Retreatより徒歩約2分
HP:
伊豆の玄関口、湯河原で週末トリップ
湯河原温泉を満喫する日帰りモデルコースを紹介しました。今回は紹介していませんが、梅の名所で知られる「幕山公園」、土肥一族の墓所がある「城願寺」など、湯河原にはまだまだ見所があります。
1駅先は熱海なので、湯河原と熱海で1泊2日旅行を計画してみるのもいいかもしれません。