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深夜25時、『東京放置食堂』というドラマを観た
テレビ東京の深夜ドラマと言えば、『孤独のグルメ』『忘却のサチコ』『ひとりキャンプで食って寝る』などなど、“深夜飯テロ”系とも呼ばれるものが多くあります。そこで2021年9月に始まったのが『東京放置食堂』(現在は放映終了)。
人を裁くことに疲れて東京を出た元裁判官の主人公・真野日出子(片桐はいり)がやってきたのは、東京から120キロ南の太平洋に位置する「大島」。
そこで日出子は、島で生まれ育った小宮山渚(工藤綾乃)と出会い、ひょんなことから、渚が祖父から受け継いだ、居酒屋『風待屋』を手伝うことに。いつからか、そんな居酒屋に人生に悩みを抱える客が顔を出すようになる。
東京にある島だからこそ交差する人間模様と、大島だからこそ振る舞えるグルメがじんわりと優しく繰り広げられる人情味あふれる島の物語。
30分ドラマでしたが、三原山やバームクーヘン(もとい角煮)と呼ばれる地層大切断面といった名所や、懐かしい雰囲気の港町・波浮港(はぶみなと)、べっこう寿司やアシタバのおひたし、くさやや島焼酎といった島グルメなどなどが、ぎゅっと詰め込まれていました。
……これはやばい!ということで、編集部員の自腹旅で行ってきました。
問題勃発!そもそも伊豆大島は「伊豆」なのか?
ところで、ドラマでも「放置された東京」と紹介されている伊豆大島。実は静岡県ではなく、東京都なのです。
IZU HACKとしては「伊豆に入れていいのか?」問題もあるのですが、熱海や伊東からもジェット船で片道約1時間なので「あり!」という判定。
風待ちの小さな港「波浮港」でロケ地めぐり
ドラマの主な舞台となるのは、日出子と渚が働く居酒屋「風待屋」がある港町。大島南部の波浮港(はぶみなと)というエリアになります。
9世紀初頭にできた火山湖の縁が江戸時代に崩れて海とつながったという港です。崖に守られている立地から“風待ち港”として寄港する船で賑わいました。
このエリアへのアクセスは、船が到着する元町港からクルマの場合は約25分、路線バスの場合は約30分です
実は素敵なカフェ!舞台となった居酒屋「風待屋」
いちばん左の建物が「風待屋」のロケにも使われた「Hav Cafe」。実際には居酒屋ではなく、落ち着いた雰囲気のカフェです。トラベルジャーナリストの女性が営んでおり、外からもセンスの良さがうかがえました。
上の写真はカフェの横にある貯氷庫。ドラマ内で日出子が居酒屋の客を連れ出し、ここで交わされる会話(お説教?)もドラマの見どころのひとつでした。
波浮港の商店には『東京放置食堂』のポスターが。このエリアのお店には、主演の片桐はいりさんのサイン色紙が飾られていました。
歴史と文学の町をぶらり散歩
波浮港の町には石畳の敷かれた路地があります。この港へ多くの船が着き、船員や観光客で賑わった往時を偲ばせる建造物も現存しています。
石畳の道から高台へと登る階段の途中にある「港屋旅館」。ここは明治初期に建てられた木造建築で、現在は「踊り子の里資料館 みなとや」として、当時の様子を伝える資料を展示しています。
急な階段を登っていく途中には、文学碑がいくつかあります。港が栄えていた時代には、文人や画家などの文化人も多くこの町に逗留や観光に訪れていました。その歴史を伝えています。
坂を登りきった高台には「旧甚之丸邸」があります。ここは明治期の建築で、高価な大谷石の堀やなまこ壁などが施されており、踊り子を呼び来客をもてなした華やかな時代を偲ぶことができます。
小腹が空いたら……「鵜飼商店」のコロッケ!
小高い丘へと階段を登ったりすると、小腹が空いてきました……。
そんなときに立ち寄りたいのが「鵜飼商店」です。ここの名物は注文してから揚げてくれる、サクサクのコロッケ。値段はなんと1個65円! ほかにもハムカツや唐揚げなどがあります。
鵜飼商店
電話:04992-4-0521
営業時間:9:00〜18:00
定休日:水曜
地層&火山!大島でダイナミックな地球を感じる
『東京放置食堂』のメインのロケ地となった波浮港を離れ、伊豆大島らしい自然を満喫しにいきます。まず向かったのは、島の西部にある「地層大切断面」です。
バウムクーヘンとも豚の角煮(?)とも呼ばれる、このダイナミックな地層。1953年の道路建設工事のときに山を削り発見されました。約2万年のあいだに起こった噴火による噴出物でできた縞模様は、まさにこの島の歴史そのもの。
つい見とれてスピードを落としてしまいますが、路肩に駐車スペースがあるので、クルマの場合はそこに駐車してからじっくり見物してくださいね。
3時間でお鉢めぐりも。三原山登山へ
伊豆大島の中央部にあるのが、三原山。島民からは「御神火様(ごじんかさま)」と崇められている、標高758mの活火山になります。
今回登ったのは、大島温泉ホテル起点でお鉢めぐりをする「温泉ホテルコース」。スタートとゴールが同じ場所のピストンなので、レンタカー利用の人にもおすすめです。
登山道はよく整備されており、また山の全容を眺めながらゆっくりと標高を上げていくため、ハイキング感覚で登ることができます。ゴールに温泉があるので、下山後に一風呂浴びることもできますよ。
【温泉ホテル往復コース|約3時間18分/約9.5km】
大島温泉ホテル(40分)→テキサスルート分岐→三原温泉分岐(5分)→三原神社(3分)→火口展望台(20分)→火口展望所(15分)→剣ガ峰(10分)→三原温泉分岐(25分)→テキサスルート分岐(40分)→大島温泉ホテル※三原山は活火山です。気象庁の「伊豆大島の活動状況」など最新の状況を確認のうえ登りましょう
大島温泉からスタート。地面は通常の土ではなく、スコリアと呼ばれる黒い火山岩で覆われています。秋は美しいススキ野原も楽しめます。
三原神社分岐から反時計回りに「お鉢めぐり」をします。5分ほどで「三原神社」に到着。全島避難となった1986年の噴火の際には、溶岩流が神殿を避けて流れを変えたという不思議な現象があったといいます。天気が良く、霞が少なければ、鳥居の先に富士山が見えます。
溶岩が作り出したさまざまな岩。そのなかでもフォトジェニックなのが「ゴジラ岩」。1986年の噴火の際にできたものだそうですが、よーく見るとゴジラの横顔にも見えてみます。
お鉢めぐりのメインとも言えるのが、この巨大噴火口。直径約300m、深さ約200mという巨大な火口は、改めて自然への畏怖を感じさせてくれます。
ちなみにお鉢めぐりでは、会話もままならないほどの強風が吹くことがあります。ウインドブレーカーなどの上着を持参し、帽子などが飛ばされないように注意しましょう。
大島温泉ホテル
電話:04992-2-1673
料金:(日帰り入浴)大人800円、小人400円
夜はキャンプで1泊。地元食材を堪能
伊豆大島の島内には、島南部の「トウシキキャンプ場」と島西部の「海のふるさと村」の2つのキャンプ場があります。
「トウシキキャンプ場」は管理棟やレンタルなどはない“基本ほったらかしスタイル”。一方、「海のふるさと村」はフリーテントサイトだけでなく、ロッジやテントレンタル、食器セットなどのレンタルもあり、食材以外は手ぶらで利用できるので、キャンプ初心者にも安心です。いずれも宿泊の場合は要予約です。
今回の旅では、トウシキキャンプ場を利用しました。ほったらかしスタイルですが、きれいに清掃されているトイレや炊事棟、ゴミ捨て場もあり、とても快適でした。
トウシキキャンプ場
電話:04992-2-1446(大島町役場観光課)
開設期間:通年
料金:無料(要予約)
予約方法:大島町役場観光課に電話で事前予約(9:00〜17:00)
スーパーを活用!地元食材でキャンプごはん
晩ごはんの買い出しは元町界隈のスーパー(ショッピングセンターべにや)や鮮魚店でまとめて行いました。お酒は島焼酎の「御神火」、地物の刺身が進みます。「サビ」と呼ばれる深海魚のすり身と名産のアシタバを使ったつみれ汁は、醤油の味付けだけでも絶品。
ショッピングセンターべにや
電話:04992-2-2051
営業時間:9:00〜19:00
定休日:無休
ほかにもある!伊豆大島の島グルメを紹介
1泊2日の滞在では、立ち寄りや買い食いをする時間も十分。今回の旅で実食済みのお墨付き島グルメを紹介します。
辛い!でもやめられない「べっこう寿司」
お寿司といえばワサビですが、伊豆大島では唐辛子醤油に漬けた刺身を使った郷土料理の「べっこう(寿司)」をぜひ。目鯛など魚はいろいろあるようですが、漬けにすることで身がきゅっと締まっています。
甘めの酢飯と唐辛子醤油の辛さ、魚の旨みと、ついつい頬張ってしまいますが、けっこう辛いので注意! 寿司店やフェリー乗り場界隈の飲食店、島内のスーパーでも販売されています。
新鮮な牛乳を使った「アイスクリーム」
大島のスーパーなどを訪れると目に入るのが、レトロな「大島牛乳」。かつては“東洋のホルスタイン島”と呼ばれるほど酪農が盛んだった伊豆大島。現在は小規模ながらも乳牛を育て、その酪農文化が受け継がれています。
島の農産物直売所「ぶらっとハウス」の横では、写真のように牛たちがお出迎え。直売所では、大島牛乳をベースに島の農産物などを使ったジェラートを食べることができます。
ぶらっとハウス
電話:04992-2-9233
営業時間:9:00〜16:00
定休日:無休
伊豆大島へのアクセスや島内での交通
ここでは伊豆大島へのアクセスや島内での交通などを紹介します。
熱海・伊東からのアクセス
伊豆大島へは東京竹芝や横浜大さん橋からの大型客船・ジェット船でのアクセスが主流ですが、熱海や伊東からも毎日ジェット船が就航しています。うまくスケジュールを組めば、日帰りでの来島も可能です。
運賃:時期によって変動あり
島内での移動手段
島内での移動手段としては、公共交通(路線バス)やタクシーのほか、レンタサイクル/レンタバイク/レンタカーがあります。それぞれのメリット&デメリットを紹介します。各交通手段の詳細は観光協会のサイトにまとまっています。
路線バス:主要な観光スポット(波浮港、三原山温泉、地層断面など)にもバス停があるが、本数が限られているので効率よくまわるには不向き。
タクシー:流しはないので貸切がベター。レンタカーに比べると割高。
レンタサイクル:免許証が不要で手軽。坂道も多く(特に島東部)、風が強いときには体力勝負。電動アシスト自転車を選ぶのがおすすめ。
レンタバイク/レンタカー:免許証が必要。レンタカーは荷物を車内にデポできて便利。
伊豆半島のその先へ。島旅を満喫しよう!
今回は『東京放置食堂』がきっかけの1泊2日の島旅でしたが、町散策、登山、温泉、島グルメ、ドライブ……と満喫。ドラマ内では“放置された東京”と紹介されていた大島にはコンビニもありません。のんびりとした時間が流れる島旅をぜひ楽しんでみてくださいね。